※情報は投稿日時点に公表されている統計調査等に基づきます。
当事務所が「北海道の付加価値を高め経済を盛り上げる」「中小企業診断士事務所」なので、北海道の経済に関すること、北海道×中小企業診断士というテーマで記事を投稿してまいります。
今回は、2024年4月に北海道庁経済部から様々な統計が発表されましたので、それを読み解いて北海道×中小企業診断士の役割を考察します。
北海道経済全体の状況(道民経済計算、企業経営者意識調査)
まず、北海道の経済状況を全国指標と比較してみます。
産業別の構成比をみてみます(「令和3年度(2021年度)道民経済計算」の概要 より)。
- 全国平均より構成比が大きい主な業種:農業、建設業、公務、保険衛生・社会事業
- 全国平均より構成比小さい主な業種:製造業、情報通信業
建設業が全国平均より多いは、北海道経済にとって北海道開発庁(当時)予算の存在が大きかったことと関係していると考えられます。また、製造業や情報通信業については、ラピダスのプロジェクトやデータセンター構想が実現したら、大きく変わる可能性がありそうですね。
次に、道民の所得の推移をみていきます(「令和3年度(2021年度)道民経済計算」の概要 より)。
所得はゆるやかに増大傾向しつつも、全国平均と比べると常に90%弱(赤枠箇所)で推移。
次は「企業経営者意識調査」によるデータを見てみます。こちらは、四半期ごとに道内の経営者約900社に調査したものです。まず、景況感を示した表を見ていきます(令和6年1-3月期調査より)。なお、ここでいう「BSI」とは「上昇-下降」の値です。
- 業界:1-3月期は全体的に下降傾向であり、かつ前期(10-12月期)より悪化。一方で、今後の見通しはおおむね回復傾向。しかし製造業、運送業の見通しは相対的に厳しい。
- 資本金:5千万円未満の企業、つまり小企業~個人事業主になるであろうゾーンは厳しい傾向が続いている。見通しもプラスにはなっていない。
- 地域:道北、十勝、釧路・根室が特に悪い傾向。オホーツクは回復見通しが強い。
また、この調査で注目したいのは資金繰りに関する回答結果です。どこもマイナス値であり、厳しいというのが明確に出ております。特に注目なのが黄色マーカー箇所です。
- 業種:全体的に厳しい。製造業が見通し含めて厳しいほか、運輸業は悪化見通し。
- 資本金:景況感の項に同じく、5千万円未満の企業、つまり小企業~個人事業主になるであろうゾーンは厳しい傾向が続く。加えて、5千万円~1億円未満のゾーンは悪化傾向見通しであり、楽観視できない。
- 地域:どこも厳しい見通しながらも、見通しは回復傾向。釧路・根室はさらに悪化する見通し。
北海道各地域の景況感(地域別経済動向調査)
北海道庁では四半期ごとに「地域別経済動向調査」という景況感を天気で表現した調査を公表しています。これは、各地域に本店を置く信用金庫さんの調査に基づく景況感を天気で示したもので、晴れ=好調、曇り=普通、雨=低調とのことです。
直近は以下の通りです(令和6年1-3月期)。道庁HPの画像に金融機関名称(「信用金庫」は省略、カッコは本店所在地)を加筆しました。
- 普通:札幌、岩見沢、伊達、旭川、名寄、紋別、釧路
- その他:やや低調~低調
全体観では普通~低調という状況です。地域別の景況感一覧も道庁HPでは公表されておりますが、低調要因は仕入コスト上昇、人手不足、地域特性(海産物輸出規制など)が挙げられております。今後の見通しについては、網走地域を除いて回復傾向という見解が出ております。
北海道内の金融に関する統計(北海道信用保証協会)
北海道信用保証協会では、保証業務に関する統計を毎月公表しております(広報・発刊物のページ)。
年度でまとめた調査を4月12日に公表しており、調査物の公表スピードが早いのが特徴です。「令和5年度信用保証の実績」から金融動向を見ていきます。
なお、信用保証協会で公表する数値はあくまでも信用保証に関するものなので、保証付き融資を利用している事業者(おおむね中小企業~個人事業主)の金融動向を見る目安といえるでしょう。
ちなみに全道的な金融・経済に関する動向は地方銀行の北洋銀行(ほくよう調査レポート)、北海道銀行(調査ニュース・北海道経済の見通し)でも発表があります。これらは、今後取り上げていく予定ですし、Xで読み合わせなんかもやるかもしれません(?)。
これは全国的な傾向なのですが、コロナ禍で資金繰りなどの改善を目的に無利子・無担保で行った「ゼロゼロ融資」の影響で、保証債務残高は一気に増え、2020年度の保証承諾額にもその結果が出ております。
一方で、代位弁済(返済不能になった債務者に代わり保証協会が債権者に返済した額)は2022年度からコロナ前の額を上回り始めてきました。リーマンショック前後(おおよそ2008~2012年度)に比べるとまだ少ないですが。
代位弁済のデータについて、もう少し詳しく見ていきましょう。
(出所:北海道信用保証協会「令和5年度信用保証の実績」)
- 代位弁済額でみると、R5(2023)年度は建設業、サービス業、小売業の順に金額が高い。
- 対前年比でみると、R5(2023)年度は飲食店、建設業、サービス業の順に金額が増加。
(※金額が相対的に小さい不動産業、その他は捨象) - 倉庫運送業を除いて、前年比より代位弁済額は増加している。
※札幌市を含む石狩振興局を捨象すると、以下のことが言えます。
- 代位弁済額でみると、R5(2023)年度は上川、渡島、十勝の順に金額が高い。
- 対前年比でみると、R5(2023)年度は後志、釧路、十勝の順に金額が増加。
(※金額が相対的に小さい留萌、日高、根室は捨象) - 桧山、宗谷を除いて、前年比より代位弁済額は増加している。
ちなみに「(総合)振興局」というのは北海道庁の出先機関(支庁)です。他の都府県に比べて物理的に離れているため、以下の地図の通り振興局が所在しています。
(総合)振興局に続くカッコ内は、地図上の◎印にあたる(総合)振興局所在地を指します。
北海道の中小企業診断士(など)の役割は?
これまでの資料を踏まえると、以下のことが言えます。
からの、中小企業診断士の役割ということですが…
「中長期的な経営戦略や将来計画なんかより、まず足もとどうするか」というニーズと見受けました。
ですから、相談を受ける際には「御社のビジョンは?」という教科書的な話を聞く前に「前と比べて資金繰りとかどんな感じですか?」「ゼロゼロ融資はいくら入れてます?」「金融機関の担当者と最近何か会話しました?」など、お金の悩みに寄り添って、打ち手を一緒に考えるイメージと考えます。
厳しいことを言うと、資本主義経済なんで、経営が苦しいビジネスは市場のニーズに合わないということで、撤退(法的整理、私的整理など)はやむを得ない場合だってあります。
しかし、やる気があるし、付加価値はあるのにうまくいっていない事業者さんは、コンサル、補助金、再生/経営改善計画など…支援する価値はあると思うのです。そういった事業者さんに寄り添うのが、当事務所というか、中小企業診断士の役割だと思います。
当事務所でも資金繰りなどお金の悩みについては相談をお受けしております。実際、そのような相談もいただいております。まずはご連絡ください(と、最後の最後に宣伝になってゴメンナサイ)。