※情報は投稿日時点に基づきます
「中小企業政策審議会」「金融小委員会」とは
中小企業基本法に基づいて「中小企業政策審議会」というものが設置されております。
この審議会は「中小企業白書」「小規模企業白書」の議論が有名ですが、他にも、中小企業庁所管の政策全般を議論する会議体です。
この中の部会に、表題の「金融小委員会」なるものがあります。
前回の記事では、北海道経済×中小企業という切り口でみると、これからは資金繰りが課題という話をいたしましたが、各種資料を当たるうちに、この委員会にたどり着きました。せっかくなので、内容を読んで、ブログでも取り上げることにしました。
2022年からこの小委員会は設置されておりまして、主なテーマは以下の通りです。
コロナ禍で始まった委員会なので足元の金融政策の議論が多いですが、中長期的な課題についても幅広く議論されていることが分かります。
回数 | 開催時期 | 主な内容(議事概要を基に抽出) |
1 | 2022年2月 | コロナ禍の金融支援・過剰債務 金融機関の経営支援 経営者保証 |
2 | 2022年3月 | 中小企業のエクイティ・ファイナンス M&Aの現状と課題 増大する債務への対応、経営支援 |
3 | 2022年4月 | コロナ禍における支援策の効果 スタートアップ・創業支援策 経営者保証 |
4 | 2022年5月 | エクイティ・ファイナンスの活用 政策金融の効果検証 経営者保証 |
5 | 2022年6月 | ポストコロナ・ウィズコロナの間接金融のあり方 中小企業の成長を支える新たな資金調達のあり方 |
6 | 2022年9月 | 経営者保証 |
7 | 2022年11月 | 信用補完制度を活用した経営者保証解除に向けた施策 経済対策(借換保証) |
8 | 2022年12月 | 経営者保証の機能を代替する手法を活用した制度の整備 プロパー借換保証制度 |
9 | 2023年2月 | エクイティ・ファイナンス |
10 | 2023年6月 | 今後のコロナ資金繰り支援 信用保証協会の支援の在り方 経営者保証改革 |
11 | 2023年10月 | 信用保証協会の経営改善・再生支援 中小企業活性化協議会の経営改善・再生支援 経営者保証改革 |
12 | 2024年3月 | 今後の資金繰り支援 経営改善・再生支援 |
少し古新聞(記事投稿日の3か月前)になりますが、第12回委員会で提示・議論された内容に基づいて、今後の中小企業の経営改善・再生支援政策の方向性などを読み取っていきます。
中小企業庁からの発表も、もとは委員会の内容から
先日(6月7日)中小企業庁から7月以降の金融支援策について発表がありました。
出典:経済産業省2024年6月7日付プレスリリース「今後の中小企業向け資金繰り支援について」
これ、(ルールとして当然ですが)第12回小委員会での議論を踏まえてのものです。
委員会資料の「御議論いただきたい論点」を見ると、今回の発表に関わる内容が取り上げられていることが分かります。
黄色マーカー部は、経済産業省プレスリリースの内容にかかわると思われる箇所です。
出典:中小企業政策審議会金融小委員会(第12回) 配布資料を一部加工
ですから、小委員会の資料や議論内容は、今後の中小企業政策を先読みするための大事な情報源と言えます。
中小企業活性化協議会と信用保証協会の在り方に熱視線?
個人的には、ここが第12回委員会資料で気になりました。(資料はこちら)
資料を作った方の力作感が見えたのですが(見出しと内容から、資料77ページ中33ページ該当)、議事概要を見ると、政策そのものに踏み込んだ意見はあまり出なかった印象です。
しかし、この資料では「100%保証付融資が増えていることの問題点」や「再生支援に関する信用保証協会と中小企業活性化協議会等との連携促進」など、今後大切なトピックが割と盛り込まれている印象です。
出典:中小企業政策審議会金融小委員会(第12回) 配布資料
2024年6月から改正された、金融庁「信用保証協会向けの総合的な監督指針」において、信用保証協会における経営支援・再生支援に関する位置づけや関係者連携の必要性が詳細に盛り込まれました。
中小企業診断士でご覧になっている方ならご承知と存じますが(!?)、信用保証協会は保証業務がメイン業務です。
経営支援により力を入れるというのは、その立ち位置的には適任と考えますが、プロパー融資がない、100%保証融資だから(=どちらも、金融機関の経営支援モチベーションが相対的に下がりがち)という理由で、金融機関ではなく信用保証協会が機能強化する顛末になっているような印象です。。。
経営支援は、融資している金融機関が経営支援をすべきという意見もあります。
昔は、担当が試算表取りに行く際に、社長とお茶飲みながら雑談して経営状況の情報交換をするとか、計画策定の伴走をするとかあったそうです。
しかし今は、働き方改革で帰ろう、システム化で効率化して支店の人員を減らしていこう、融資だけではなく自由化で様々な金融商品を扱おう、という波は止まりませんで、なかなか難しいようです。
これらの動きも、監督指針を所掌している金融庁がそう言っている手前「金融機関は生産性を上げて効率的に経営しながら、融資先の経営支援も強化してね」と正面から言いにくい側面もあるでしょう。
私自身、支援の現場に向かうと、同席する金融機関の方が管理職、なんてことは何度もありました。支店長直々というのもありました。
フロントが現場に行く時間がないのか、担当者が手に負えない案件なのかはわかりませんが、現場に来られないというのは、半分事実だと思います。
金融業界にいらっしゃる方から「金融機関や信用保証協会に財政出動するくらいだったら、中小企業診断士や支援する専門家に財政出動して、事業者支援の謝金に充ててほしいものです」と語られたことがあります。
確かにそうかもしれません。
金融機関も、信用保証協会もリソースが不足するなら、最近資格ホルダーが増えているらしい中小企業診断士に頼む仕組みもありではないかな、なんて思います。(勝手な意見ですが)
まあ、(私も含めて)経営改善や再生支援にがっぷり四つで取り組める中小企業診断士が全国にどれだけいるか、という所も問題ですが…試験勉強で債務超過の決算書とか、資金繰り表とか見ないですからね。