中小企業・小規模企業者の「人」に関する経営課題

中小企業診断士

※調査資料等は投稿日時点のものです

今回は、人手不足等の経営課題についてデータを調べたものを投稿します。
きっかけは、講師資料の準備で調べものをした際に「詳しく知りたい」と思ったからです。

中小企業・小規模企業者とは

中小企業基本法で定義されており、以下の企業が該当します(参考:中小企業庁WEBサイト)。

<中小企業>

業種分類中小企業基本法の定義
製造業その他資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人
卸売業資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人
小売業資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人
サービス業資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人

<小規模企業者>

業種分類中小企業基本法の定義
製造業その他従業員20人以下
商業・サービス業従業員 5人以下
  • 「商業」とは、卸売業・小売業をいいます。
  • 一部の法令では、宿泊業及び娯楽業を営む従業員20人以下の事業者を小規模企業としております。

なお、似たような言葉に「小規模業者」というものがあります。こちらの定義も中小企業庁のQ&Aに載っております。ややマニアックなので、ここでは白書に明示のある「小規模企業者」の言葉で説明します。

経営課題のトレンド

時系列で中小企業の経営課題を追いかけたデータがあります。

小規模企業白書2020 Ⅲ-46より

ザっと俯瞰した感じは以下の通りです。

  • 「売上・受注の停滞、減少」(青色)がほとんどの1位
  • 「求人難」(橙色)は1990年前後に増えた後、2010年代後半から再び増加傾向
  • 「原材料高」(赤色)は2000年代から割合が増えている

中長期的な動きは分かりました。直近の同じデータを、日本政策金融公庫HPにて確認しました。

日本政策金融公庫「全国中小企業動向調査結果」
(2024年7-9月期実績、10-12月期以降見通し)p.16「中小企業編」より作成

資金のデータを見ると「売上・受注の停滞、減少」(青色)と「求人難」(橙色)の割合が拮抗しています。つまり、売上に関する課題と同じくらい求人の課題について存在感があるということです。

中小企業・小規模企業者と「人」の経営課題

求人難についてもう少し掘り下げてみます。
こちらは小規模企業者白書2024で紹介されたデータです。

小規模企業白書2024 Ⅰ-79より

棒グラフの「従業員数過不足DI」を見ると、2011年から一貫して不足のポイントが悪化しております。
足もとはコロナ前と同水準までポイントが悪化しており、人手不足感が強いという事が分かります。

厚生労働省「一般職業紹介状況(令和6年7月分)」より作成 ※パート除の数値、「その他」の職種は除く

こちらは2024年7月のデータ、かつハローワークのデータです。
土木建設業を中心に高い求人倍率であることが分かります。
中小企業に限らず大企業も含めた全ての求人で見ている点に注意願います。

日本建設業連合会「建設業デジタルハンドブック」規模別許可業者数の推移 より

「建設業者の大半は中小・零細業者である。規模別では「個人」の減少が著しい。」同上のサイトではこのようなコメントがあります。
2023年度を見ると、資本金1000万円未満の事業者が全体の約3分の2を占めています。

建設業法では、資本金2,000万円未満の事業者は下請への発注金額の制限がありますので、資本金の小さい建設業者=中小・零細業者という表現は概ねあっていると考えられます。
(参考:国土交通省HP 建設業の許可


話は変わりまして、今度は人手不足感の無い企業の状況です。

小規模企業白書2024 Ⅰ-81より

賃金や賞与の引き上げがダントツでトップ、その次に働く環境に関する項目が続いています。
入社する側のデータを見ても、入社の決め手で「給与が良い」と答えた割合は相対的に高く、求職者のニーズをくみ取れば人手不足には困らないという事は確かなようです(下図参照)。
※余談ですが、希望の勤務地というのも重要な決めてですね。

出所:マイナビ・転職動向調査2024年版(2023年実績)

もちろん、賃金は固定費の上昇に繋がるため、そう簡単に踏み切れないところです。
賃上げの大号令が国から示されて、続いて価格転嫁の重要性・必要性を国がプッシュしてくれるようになりました(中小企業庁 価格転嫁・交渉の支援ツール)。

しかし、相手のある話なので、そう簡単に値上げはできるものではありません。

1つの考え方として、自社に限らずサプライチェーン全体の事業継続という観点で、適正な価格での取引を働きかけることは大切と考えます。上流工程同士で連携して交渉に臨むとか、同業者で連携して交渉力をつけるとか、価格以外の価値(不良率改善等)を訴求するといったことが考えられます。

価格転嫁・価格交渉は最近のトピックでもあるので、改めて記事にする予定です。

まとめ

今回は人に関するテーマとして、人手不足にフォーカスしました。

  • 中小企業・小規模企業者の経営課題として、売上に関する課題と同程度に「求人難」という課題を抱えている
  • 人手不足感は2011年ころから一貫して続いており、特に土木建設業の職種において有効求人倍率は高位に推移している
  • 人手が不足していない企業の取組を見ると、賃金の改善が1番の要因であり、転職者の入社の決めても給与が2番目に

では、また!

タイトルとURLをコピーしました